芽吹きの季節

蕾

春らしい気候になってきました。庭の新芽たちはカモシカの餌食になっております。

高野山には古くから「高野紙」と呼ばれる和紙があります。これは高野山麓の村々で漉かれていました。近年、ユネスコの無形文化遺産に登録された和紙の中にある「細川紙」は、この高野紙がルーツとされています。そんな高野紙も需要の減少とともに漉き手が少なくなり、その技術が途絶えようとしていました。しかし、十数年前から高野紙復活に向け「和紙の会」が作られ、飯野尚子さんによって紙漉きの技術は受け継がれております。

その飯野さんとお話しする機会があり話の中で、おもしろい和紙の加工技術を教えてもらいました。それは「打紙」と呼ばれるものです。

打紙は、加工工程をざっくり言うと乾燥させ完成した和紙に「ネリ」という紙漉きに使われる液体を塗布します。塗布した紙を何十枚か重ね、木槌で上から全体を叩きます。これを行うことにより繊維が潰され、紙の厚みは元の3分の1ほどになります。表面はツルツルになり、しなやかさもプラスされるのです。私も加工前後の紙を触りくらべ、表面のツルツルとしなやかさに驚きました。

画像で、なんとなく加工後が薄くなっているのが見てもらえると思います。

加工前は横に漉き簾の跡が見えます。しかし加工後は、その跡がなくなり全体にツヤが出ています。

この打紙加工は、平安時代で既に存在し、この時代の漉いた和紙には必須の加工だったのではないかといわれています。しかし時代が進み鎌倉時代になると、打紙加工は少なくなり稀に加工されてあるとビックリされる、そんな移り変わりがあったようです。

打紙加工された紙は筆のすべり・墨持ちがとても良く、筆先まで綺麗に書け、特に仮名文字を書くときに、この特長が十分に発揮されるようです。

和紙は歴史が古いですし、私もまだまだ知らないことがあると思います。表具の裂地もまたしかり・・・普段使っている道具材料一つひとつを採っても知らないことがたくさんあるのでしょう。でも、その知らない知識に触れるきっかけがないと知りたくても知りようがないと思います。だから今回、打紙について教えていただけた飯野さんには、深く感謝いたします。

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