100年ぶりの再会

先日、京都で行われた表装についての研修会に行ってきました。国内外から300名を越す表装技術者が集まり、有識者によるテーマに沿った講演を聴くことができました。最新の表装技術についての話が聴け、とても有意義な研修会となりました。

せっかく京都に来たので、24日まで京都国立博物館で開かれていた特別展「流転100年 佐竹本三十六歌仙絵と王朝の美」展に行ってきました。

佐竹本三十六歌仙絵とは何か?

平安時代、藤原公任に選ばれた飛鳥時代から平安時代の歌人36人を題材に描かれた絵巻物が三十六歌仙絵です。この絵巻は旧秋田藩主・佐竹侯爵家に伝わったことから「佐竹本」と呼ばれます。三十六歌仙絵と呼ばれるものはいくつかありますが、中でも佐竹本は最高の名品とされております。佐竹本三十六歌仙絵は、一歌仙ごとに歌仙の姿絵と詠んだ歌が一枚の和紙に描かれており、それらを繋ぎ合わせ巻物になっています。

佐竹本は時代と共に所有者が転々と変わります。そして大正6年、所有者が山本唯三郎へと変わるのですが二年後、山本氏が経営不振を理由に佐竹本を売りに出します。しかし佐竹本の高額さ故に買い手がつかない状況になります。

このままでは、海外へ流出するかとなったときに三井物産創設者である益田孝(鈍翁)を中心とした実業家たちにより一つの提案がされます。それは佐竹本三十六歌仙絵を一歌仙ごとに分断し、それぞれを購入希望者に、くじ引きで割り当て購入してもらうという形でした。これは当時「絵巻切断事件」とスキャンダラスに新聞で取り上げられます。しかし、分断された後は、それぞれの所有者が趣向を凝らした掛け軸に仕立て上げ、素晴らしい美術品へと変貌しました。

その後も各歌仙絵掛け軸は、所有者が転々とします。まさに、この特別展のテーマにもある「流転」。今回の特別展は、分断され流転すること100年。100年ぶりに31点が一堂に集まりました。これは過去最大の数とのこと。

僕は、この特別展に来られる人が多いと事前に聞いておりましたので開館まもなく博物館に到着したのですが、館内にはすでに長蛇の列。皆様の注目度の高さがうかがえます。博物館入り口までに特別展の顔となっている女性歌仙「小大君」のパネルがありました。女性歌仙は絵の華やかさもありか人気があり、絵巻切断事件のときも皆が女性歌仙を欲しがったとか。

京都国立博物館 佐竹本三十六歌仙絵

館内に展示されている歌仙絵の掛け軸は、それぞれ趣向を凝らしただけあり、使われている裂地も着物や帯を使ったと思われるものが見られました。中でも特に個性的な表装が「坂上是則」歌仙絵の表装でした。歌仙絵の周りに裂地を使わず、雪山を描いた山水画に歌仙絵をはめ込むように表装してありました。坂上是則が詠んだ歌に合わせ雪山の山水画を選んでおり、歌仙絵と表装が一体となった斬新な掛け軸でした。

その他には、ド派手で個性的な帯?や裂地を全体に使っており、歌仙絵より表装がメインに見えてしまっている掛け軸や軸棒の先に付く塗り物が、それだけで結構な御値打ち物であろう品が使われていたり表具師にとっては大変目の保養になりました。

巻物として、一つの美術品となっていた佐竹本三十六歌仙絵を分断するという決断は、相当の葛藤があったのではないかと思いますが、その英断があったおかげで36の個性豊かな美術品へと増え、我々を楽しませてくれています。いずれ、すべての佐竹本三十六歌仙絵が一堂に揃うことを楽しみにしています。

こういった展示の際、よく売られている出展物のカタログ。いつも表装まで載せられていなく少しガッカリするのですが、今回は、表装もバッチリ載せられており、即購入決定でした。参考資料が増えて大満足。

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